看護師になるには理系?それとも文系?どっちがいいのでしょうか。
文系でも行けるって聞いたけど…
文系だったら不利になるとかはない?
そんな風に進路選択に悩む高校生は少なくありません。特に呉市の高校生からは、
「国公立を目指したいけれど、理系は難しそう」
「数学IIIまでやらずに看護師を目指せる道はあるの?」
といった声がよく聞かれます。
実は、文系・理系の二択だけでなく「数IIIなし理系」という選択肢もあるのをご存じでしょうか。
この記事では、文系・理系・数IIIなし理系の違いや受験科目の実態、さらに国公立・私立の大学別の傾向までわかりやすく解説します。
看護師を目指すあなたが、自分に合った進路を見つけられるように。ぜひ参考にしてみてください。
- 看護師になるには文系からでも理系からでも進学可能。
- ただし、国公立志望なら理系寄りの準備が有利で、とくに「数IIIなし理系」が現実的。
- 私立専願なら文系でも十分合格可能だが、入学後の学びを考えると理系科目の基礎は必須。
看護師になるための基本ルート

看護師になるためには国家試験に合格する必要がありますが、国家試験の受験資格を得るルートは、大きく分けて次の2つです。
- 4年制大学の看護系の学科に進学する
看護学士の学位を取得しつつ、看護師国家試験の受験資格を得ることができます。将来は大学院進学や保健師・助産師などへの道も広がりやすく、選択肢を広く持ちたい人におすすめです。 - 3年制の専門学校に進学する
より早く国家試験の受験資格を得られるルートです。大学に比べて学費が抑えられる場合もありますが、就職の幅や学びの広がりという点では大学に及ばない部分もあるかもしれません。
高校生が看護師を目指す場合のルートは基本的にはこの2つですね。准看護師から正看護師になる道もありますが、現在では少数派であり、高校生が最初に考えるルートとしては現実的ではありません。
そんなわけで、全国レベルの難関大あるいは地元国公立大や私立大を目指す、あるいは最寄りの看護専門学校を考えるということになるでしょう。
文系でも理系でも看護師にはなれる
看護師になるための学校には、文系出身でも理系出身でも進学できます。
この記事の後半で詳しく述べますが、多くの私立大学や専門学校は3科目程度の文系科目だけでも受験できます。ただし、国公立大学を目指す場合は理科や数学が必須になるケースがあり、特に難関大ほどその傾向は顕著です。
そういったことから、さまざまな大学について調べ終わるまでは「理系」と思っておいた方が安全ではあります。
入学後の学習や国家試験に必要な「理系」要素
「文系でも看護師になれる」とよく言われますが、入学後の学習内容を見てみると、やはり理系寄りの要素が強いことは事実です。
入学後に学ぶ理系科目
看護系の大学や専門学校では、最初の1~2年で基礎医学系の科目を学ぶことになります。たとえば以下のようなものです。
- 解剖学(人体の構造)
- 生理学(身体の働き)
- 生化学(細胞や代謝の仕組み)
- 微生物学(病原体や感染症の基礎)
これらはいずれも高校で学ぶ「生物」「化学」とつながりが深い内容です。特に生物で学んだ人体の仕組みや、化学で扱う化学反応の知識・計算の素養は、看護学の基礎を理解するうえで大いに役立ちます。
国家試験に出る計算問題
また、看護師国家試験には計算問題も出題されます。とくに薬の量を計算する「比例計算」は頻出です。
実際の過去問題を一つ紹介します。
第111回看護師国家試験(2022年)より
100mg/5mLと表記された注射薬75mg与薬するのに必要な薬液量を求めなさい。ただし、小数点以下第2位を四捨五入すること。
このように、一見すると中学校レベルの計算問題に見えるものもありますが、患者さんの命に関わるため正確さが求められます。また、「答えが出ればよい」というものでもなく、量に対するイメージ(この過去問なら「100mgに対して75mgは4分の3だな」などという感覚)も必要になると思われます。
そんなわけで、看護師にとって数学IIIのような高度な知識は必須ではないのでしょうけど、基本的な割合・比・比例の計算力や感覚は欠かせない力といえるでしょう。また、数学IAやIIBで学ぶ統計の知識も有用となるでしょう。受験でどの科目を使うかによらず、数学IA・IIBの基礎を確実に固めておくことは、将来の看護学にも直結する大切な準備になりますよ。
理系・文系の出題範囲と「数IIIなし理系」の存在

ここからは、実際に入試でどんな科目が必要になるのかを整理していきましょう。実は大学によって結構違うので、「看護師になるには理系?文系?」という大ざっぱな区分よりももっと細かい目で調べていく必要があります。
国公立の理系・文系の出題範囲
まず前提として、この記事では「理系」「文系」を次のように区別しています。また、耳慣れないかもしれませんが「数IIIなし理系」という区分を以下のように定めます。
- 理系 … 数IIIあり・専門理科2科目・社会1科目を履修するルート
- 文系 … 数IIIなし・理科基礎2科目・社会2科目を履修するルート
- 数IIIなし理系 … 数IIIなし・専門理科2科目・社会1科目を履修するルート
なお、数学IIIは共通テストには出題されませんが、大学によっては2次試験で課されます。
この区分に沿って看護系の主な国公立大学の出題範囲を整理すると、下のようになります。どの情報も年度によって変わる可能性があるので、必ず読者自身で最新情報を調べてください。
大学 | 共通テストで必要な理科 | 共通テストで必要な数学 | 2次試験で数III | コメント |
---|---|---|---|---|
東京大・京都大 | 専門2科目 | IA・IIBC必須 | 必要 | 最難関。完全に「理系」ルート。 |
大阪大・九州大 | 専門2科目 | IA・IIBC必須 | 不要 | 2次で数IIIが不要のため「数IIIなし理系」。 |
広島大(理系受験) | 専門2科目 | IA・IIBC必須 | 必要 | 2次で数IIIが必須なので「理系」ルート。 |
広島大(文系受験) | 基礎2科目or専門2科目(社会2科目必須) | IA・IIBC必須 | 不要 | こちらは完全な「文系」ルート。 |
岡山大(理系受験) | 専門2科目 | IA・IIBC必須 | 不要 | 2次で数IIIが不要のため「数IIIなし理系」。 |
岡山大(文系受験) | 基礎2科目 | IA・IIBC必須 | 不要 | 「文系」で対応可。 |
愛媛大・県立広島大 | 専門1科目or基礎2科目 | IA or IIBCの片方 | 不要 | 「数IIIなし理系」または「文系」で対応可。 |
山口大 | 専門1科目or基礎2科目 | IA・IIBC必須 | 不要 | 「数IIIなし理系」または「文系」で対応可。 |
国公立大の場合、共通テストの受験科目数は基本的に6教科7~9科目と多めです。理系・文系どちらを選んでも負担は大きくなりますが、難関大ほど「専門理科2科目」が必須になる傾向があります。また、社会については広大の文系受験で2科目必須になる以外は1科目で受験可能です(岡大の文系受験でも社会は1科目です)。
2次試験について見ると、数学IIIが必要なのは東大・京大・広大など一部の大学に限られます。いわゆる難関大でも阪大・九大では数IIIが不要となっているのが興味深いところです。
また、愛媛・山口・県立広島は、よく見ると「理科基礎2科目+社会1科目」で受験できますね。ですから「文系」と言っても社会が1つで済むのは、準備の負担が少なくて助かる…と言えるかもしれません。
文系型入試で看護系の国公立大学を目指す場合、理科基礎をどうするか?という問題についてはこちらの記事をお読みください。

広島県内の私立大は文系で教科数が少ない
国公立大と比べると、広島県内の私立大学の看護学部は入試科目数がかなり少なく設定されています。代表的な大学を整理すると次のようになります。私立大学は入試日程によっても必要な科目数が違いますが、以下は代表例を取り出しました。
大学 | 必要科目数 | 数学の範囲 | 理科の範囲 | コメント |
---|---|---|---|---|
広島国際大 看護学部 | 2~3科目 | IAまで(IIBも選択可) | 専門1科目を選択可(理科を選択せず国語や公共でも受験可能) | 国公立との併願なら「数IIIなし理系」。 |
安田女子大 看護学部 | 2~3科目 | IAまで | 専門1科目 or 基礎2科目を選択可(理科を選択せず英・国・情報でも受験可能) | 国公立との併願なら「数IIIなし理系」または「文系」。 |
日本赤十字広島看護大 | 3科目 | IAまで | なし | 英・数IA・国の3科目。 |
見てわかる通り、私立大は数学IAまでで受験できるケースがほとんどで、理科も選択しなくても受験できてしまいます。国公立との併願を考えるなら「数IIIなし理系」が無難ですが、私立専願なら「文系」の区分でも十分受験可能です。
さらに「文系」と言っても、国公立大の文系入試が「理科基礎2科目+社会1~2科目」を課すのに対し、私立大の文系入試はさらに教科数が少なく、負担が圧倒的に軽いといえます。そのため、「国公立の文系」と「私立の文系」を同じ「文系」と一括りにしない方がよいでしょう。
なお、日赤広島看護大の入試情報サイトには、入試科目に含まれなくても「化学」「化学基礎」「生物」「生物基礎」は「履修すべき科目」と明記されています。これは入学後の学習に必須だからでしょう。

私立大に入学する学生の中には「国公立を目指していたが私立に進学した」という人も多くいます。そうした同級生と同じカリキュラムを学ぶことになるため、「入試が楽だから安心」と油断せず、基礎力をしっかり固めておくことが大切です。
数IIIなし・専門理科2つという「数IIIなし理系」
ここまで見てきたように、看護系の進路で「数III」が必須となるケースは実は限られています。東大・京大・広大など一部の大学を除けば、多くの国公立大は「数IIIなし・専門理科1~2科目」という形で受験可能です。私立大を併願する場合にも、専門理科の受験準備を進めておくことはほとんどのケースで無駄にはなりません。
さらに専門理科は、入学後の学習でも大きな意味を持ちます。化学・生物は大学で学ぶ解剖学や生化学につながるため、しっかりと取り組んでおくと入学後に大きなアドバンテージになります。日赤広島看護大のサイトにこれらの科目が「履修すべき」と書かれていることを思い出してください。
以上を考えると、「数IIIはやらないけれど、専門理科2科目にはしっかり取り組む」という「数IIIなし理系」のスタイルは非常に合理的です。
「数IIIなし理系」が選べるかどうかは学校や年度によって異なるため、実際には先生に確認する必要があります。もしこの選択肢が取れるなら、国公立大の受験にも対応でき、かつ入学後の学習にも直結するため、バランスの取れたルートだといえるでしょう。
ちなみに呉市の代表的な公立高校である三津田・広・宮原の各高校においては、おおむね以下のようにして「数IIIなし理系」を選択可能になっています。
- 高1の秋頃に「高2から専門理科2科目を学びます」と選択する
- 高2の秋頃に「高3では数IIIをやりません」と選択する
ただし年度やコース(呉三津田高校の理数探究類など)によって異なる可能性があるので、必ず早めに学校の先生に聞いてくださいね。
志望校別に見る「文系・理系・数IIIなし理系」シミュレーション

ここまでの内容を整理すると、高校生にとって一番気になるのは「結局、自分の志望校ではどのルートが必要なの?」という点でしょう。そこで、呉エリアの高校生が実際によく考えるであろう進路パターンをいくつか紹介します。自分の志望校と照らし合わせながら読んでみてください。
東大・京大を目指すなら
- 数III必須、専門理科2科目必須
- 最難関のため、完全な「理系」ルートでの準備が必要。
「理系」でなければ受験できません。そもそもこのレベルの大学を目指すなら、数IIIの負担ぐらいには耐えられる学力が必要です。
阪大・九大を目指すなら
- 数III不要、専門理科2科目必須
- 「数IIIなし理系」で受験可能だが、併願先によっては「理系」を履修しておく必要あり。
阪大・九大の看護系は「数IIIなし理系」で受験可能です。ただしこのレベルの国立大を目指す生徒は、併願先に九大や広大の理学部・工学部を視野に入れることもあるため、その可能性がある場合には「理系」で履修しておく必要があります。
広大を目指すなら
- 共通テスト・2次ともに文系受験と理系受験の両方が可能。
- 理系で受験する場合は数III必須+専門理科2科目。
- 中四国でトップレベルだが、阪大・九大とは条件が異なる。
広大を本気で狙うなら「理系」か、または「社会2科目の文系」が必要です。ただし「理系」で共通テストの得点が広大レベルに届かなかった場合、その他の国公立大の看護系で数IIIを使うことはないので、「頑張った数IIIの使い道がなくなる」というリスクもあります。併願先も含めてよく考えましょう。
岡大を視野に入れるなら
- 共通テストは文系型・理系型のどちらも選択可能。
- 2次は英語と面接のみ。
- 共通テスト理系型では 数III不要、専門理科2科目必須。
「九大がダメなら岡大にしよう」という併願パターンなら「数IIIなし理系」で対応可能です。
また、文系型でも共テ社会は1科目だけで、理系型との違いは主に傾斜配点だけです。さらに2次は文理共通で「英語と面接」になっていることから、「数IIIなし理系」で最後まで頑張って、出願時期に文系型か理系型かを決めるという戦略が採りやすいでしょう。
愛媛大・山口大・県立広島大
- 数III不要、専門理科1科目または理科基礎2科目が必要。
愛媛大学など、地域の国公立大は「数IIIなし理系」または「文系」で対応可能です。

ただし「科目が少なくて負担が軽そうだから」という理由で文系を選ぶ人は、多くの場合「気のゆるみ」が原因で愛媛大学に届きません。目指すなら目的意識をしっかり持って頑張りましょう。
広島国際・安田女子・日赤看護など県内私立大
- 数学はIAまででOK。
- 理科は専門1科目or基礎2科目だが、ナシでも受験可能
- 教科数が少ない(2~3科目)。
私立専願なら「文系」で十分受験可能です。ただし入学後は国公立組と同じカリキュラムを学ぶので、基礎力の不足には十分注意してください。授業についていけず留年する例もあります。
国公立との併願なら「数IIIなし理系」がいいでしょう。
まとめ
看護師を目指すうえで、文系・理系どちらの道からでも進学は可能です。しかし、大学ごとの入試科目や入学後の学習内容を考えると「数IIIなし理系」というルートが最も現実的で、かつ将来の学びにもつながるバランスのよい選択肢といえます。
もちろん東大や京大をはじめとする最難関大を目指すなら、数IIIや専門理科2科目を含む「理系」一択ですし、逆に私立専願であれば「文系」でも十分に対応できます。ただしどのルートを選ぶにしても、高校で学ぶ内容を「入試のためだけ」と捉えず、入学後や将来の看護実務につながる学びとして積み重ねていくことが大切です。
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一般選抜以外にも学校推薦型選抜や総合型選抜といったルートがあります。どうやって備えたらいい?とお悩みの方はこちらをお読みください。


看護系大学を文系で目指す場合の理科基礎をどうするかについては、こちらの記事をお読みください。


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