国語は特に勉強しなくても点が取れていたから高校も大丈夫でしょ
高校入試の古文も困らなかったし、国語の優先順位は低いかな
このような感覚を持っている中学生、そしてその保護者の方は結構いらっしゃると思います。高校入試は英数2倍という傾斜配点の学校も多く、積み上げ型の英数がとにかく重要なんだ!というのは間違いありません。ただ、英数だけを特別に優先すべきという感覚で高校生になっても大丈夫なのでしょうか。
実は、中学と高校で学ぶ内容に大きくギャップを感じるのは国語なのではないかと思います。その要因としてはやはり、高校に入ると「古文・漢文」の存在感が一気に大きくなることでしょう。そして現代文も実は難しくなっているのですが、自分好みの文章が出たときは点がとれてしまうため、力不足に気づきにくい科目です。
そんなに苦手意識もないし、英語みたいに読めなくて困る感じもしないから「国語は勉強しなくても解ける…はず」という気持ちのまま高校3年生になってしまうと、案外大変な状況に陥るかもしれません。
- 高校入試と大学受験の共通テストでは古典の比重が全く違う
- 古典の知識は丸暗記だけでもだめ、使い分けを練習しながら基礎知識にフィードバックが必要
- 高1で古典の基礎知識はすべて学び終えるため、文系も理系も高1がとても重要な時期
中学国語:入試での古典の比重が小さい
まず、中学生の目線で国語について見てみましょう。広島県の公立高校入試(国語)は近年、次の3題構成です。
- 大問1:小説的文章(20点くらい)
- 大問2:説明的文章(18点くらい)
- 大問3:古典(古文または漢文)(12点くらい)
合計50点のうち、古典は12点くらい、つまりおよそ4分の1にすぎません。
中学生の学習では助動詞などの複雑な文法はほぼ扱われず、竹取物語や徒然草、平家物語などを通して基本的な古文単語や係り結びの法則を学び、敬語や動作主を読み取る体験をします。高校入試レベルの古文には現代語訳や注釈がついており、文法的知識などから登場人物の心情を読み取るような高度な問題は出題されません。中学生にそこまでの力は求められていないのです。
このため、中学生にとって古典は「配点が小さく、体系的な知識がなくても解ける」分野となっています。もちろん、それでもストーリーを推測するのが苦手な人もいると思いますが、それは「古典の知識が欠如している」のとは異なる原因です。
実際、広島県の全県模試や各学校で実施される学力テストでも、国語の平均点は英語や数学より高く出ることが多く、危機感を抱きにくい科目といえます。下の数字は2023、2024、2025年の広島県8月全県模試の平均点で、赤いマルがついている科目が国語です。他の科目より平均点が高いことがわかります。「偏差値」という観点がまだない中学生も多く、自分の得点のみを見て「国語はまあ他の科目よりできているな」と思い込む中学生も一定数いるのではないでしょうか。

高校国語:大学入試では古典が半分
一方、大学入試共通テストの国語は 200点満点のうち古文45~50点+漢文45~50点=90~100点。つまり大体半分は古典です。
さらに高校国語では、中学と比べて次のような知識が求められます。
- 古文単語:約300語
- 古典文法:動詞、助動詞の活用・接続・敬語など
- 古典常識:時代背景や文化的知識
- 漢文:返り点・句形の体系的習得
中学の「10〜20語くらいの単語力」「係り結びの法則程度の文法」とは当然次元が違う知識量です。補助的な現代語訳もなくなります。
しかも、古文も漢文も基本的な知識はほとんど高校1年生で学習を終えてしまいます。これは非常に重要です。1年生から大学受験をしっかり意識している人は良いのですが、そうでない人は基礎知識をおろそかにしたまま進級することになります。
「まあ国語は中学でも困ったことないし大丈夫でしょ」という気持ちのまま基礎知識を身につけそびれてしまうと、後々他の科目の勉強もしなくてはならない受験期に多大な時間と労力を割かなくてはなりません。
近年の国語を取り巻く環境
今の保護者世代には馴染みのない呼び方だと思いますが、2022年以降の新課程で高校国語は、「言語文化」「文学国語」「論理国語」「古典探究」という授業に再編されました。古典文法は「内容を理解するための手段」として位置づけられ、 「活用表を暗記すること」よりも「文脈の中で理解・運用すること」が強調されるようになっています。
かつての古文の授業は文法重視の傾向があったはずですが、今は使い分けることも意識されているということです。当然それは喜ばしいことなのですが、一方で基礎的な文法がわからないまま学年を重ねることで、知識がないのに読解しようとして空回りする人も生まれつつあるのではないかなと感じています。

実際にこのメディアを運営するコムタス進学セミナーの現場でも、そんな状況が感じられる場面があります。たとえば、少し抽象化して書きますが…
- 呉三津田高校に通う3年生に対して、高1で学習する漢文句形を振り返る授業を行った。
- 受講した生徒Aさんは直後の模試で漢文の得点が大幅に上がった。
- 生徒Aさん「今まで解けなかったのは句形という基礎知識をおろそかにしていただけだったんだ、目から鱗でした。」と振り返る。
- 同じ授業を受けていた他の生徒からも「今まで覚えるべき基礎知識が抜けていたから得点できなくて苦手意識があったんだ」のような反応が複数あった。
この生徒Aさんたちは漢文の勉強をおろそかにしていたわけではなく、むしろ意欲的に問題演習をたくさんしていたそうです。ですが、問題を解くために必要な「知識」が実は欠けているということに、自分では気づかなかったということでしょう。
近年は呉市の高校でも、生徒同士が教え合うことが推奨され、基本的な文法は授業ではなく宿題のみで取り組むことも多くなってきているようです。そのため、「知識を習得すること」の大切さが生徒に伝わりにくくなっているのかもしれません。しかし、基礎となる知識がインプットされていないと、問題を解くのが「当てずっぽう」になってしまうと思いませんか?そんなわけで、基礎を学ぶ高1の時期をおろそかにしてしまうと、その後の学びに大きな差が生まれてしまうでしょう。
重要なのは、時代や環境に合わせて柔軟に向き合う姿勢を変えていくことです。今の時代、学校では「読解重視」なのだとすると、生徒自身は意識的に基礎知識のおさらいをするといいかもしれません。まずは「どの知識があればこの問題を解くことができたのだろう」と考える練習をするとよさそうですね。
ライター菅原そうはいっても、高校生が自ら基礎知識のおさらいに取り組むのはなかなか難しいと思います。だからこそ、ここは学習塾でサポートさせていただける大切なポイントのひとつであると考えています。
受験直前に丸暗記…では解けない問題がある
話は少し変わりまして、よくSNSなどで「古文は受験直前の1ヶ月で集中してやればいい」のような意見を見かけることもあります。しかし呉市のお子さんたちをお預かりする責任ある立場として断言しますが、そのような極端な方法で良い結果が得られるのはある一定以上の学力がある生徒だけです。
1ヶ月で他の勉強と並行しながらできることと言えば「知識のつめこみ」になると思いますが、「丸暗記しても解けない」のが大学受験です。例えば「いかにして」という語は、単語帳では…
- 疑問「どのようにして」
- 願望「なんとかして」
と載っています。これを暗記したとして、過去の2019センター試験では以下のように出題されています。


いかがでしょうか。ただ暗記しただけでは、②と④の2択までしか絞ることができないことがわかります。
また、古典文法で重要な助動詞についてです。例えば、助動詞「む」の意味は、推量・意思・仮定・勧誘・婉曲・適当なので、頭文字をとって「スイカ変えて」とゴロで覚えようと教えられることが多いです。助動詞「む」がでたら「ス・イ・カ・変・え・て」だったな…と暗記していたとして、2015センター試験では




こちらも、ただ丸暗記では①推量と②の婉曲で2択までしか絞れません。2択ということは50%しか点が取れないということです。しかし50%の得点率で届く国公立大学はほとんどありません。国語の勉強を後回しにしただけで、大学受験において大きなダメージを受けてしまうという現実は、もっと知られてもよいのではないかと思います。
これらの例はセンター試験時代のもので、近年の共通テストでは文法知識だけを問う設問は減少傾向にあるようですが、助動詞・敬語・係り結び・句法などの知識を使わないと解けない設問が、読解の中に織り込まれていることは十分あります。共通テストでも、直前の丸暗記では対応できない問題があるということです。
実際の共通テスト得点率のデータ
過去3年の共通テストのデータを見てみましょう。まず平均点、国語は決して簡単ではないことがわかります。平均点は100〜120点台に収まっており、他の科目と同じく高得点を取るのは難しい科目です。以下が平均点です。
- 2023年:105.7/200点
- 2024年:116.5/200点
- 2025年:126.7/200点
さらに、大問別の得点から古文と漢文に絞ってみます。古文の得点率は以下の通りです。
- 2023年 21.867/50点 得点率43.7%
- 2024年 24.563/50点 得点率49.1%
- 2025年 25.841/45点 得点率57.4%
漢文の得点率は以下の通りです。
- 2023年 21.657/50点 得点率43.3%
- 2024年 27.001/50点 得点率54.0%
- 2025年 24.531/45点 得点率49.1%
つまり、古文・漢文は毎年「平均で半分前後しか取れない」科目ということです。「古典はとにかく暗記をすればいい」「直前に集中して取り組めば8割取れる」という言葉を鵜吞みにして、勉強を後回しにしていい理由にしてはいけないということがわかるはずです。
出典:大学入試センター
- 『令和5年度大学入学共通テスト 実施結果の概要』令和5年度 試験情報データ(本試験)
- 『令和6年度大学入学共通テスト 実施結果の概要』令和6年度 試験情報データ(本試験)
- 『令和7年度大学入学共通テスト 実施結果の概要』令和7年度 試験情報データ(本試験)
文系だけではない、進路に直結する「国語の得点」
共通テスト国語は200点満点で38問前後しかありませんから、1問あたりの配点も大きいです。例えば8点問題を4問落とすだけで32点失点、受験校を変えなければならないレベルです。
もちろん文系は国語や英語で勝負をしなくてはなりませんが、理系も国語を軽視すると国公立大学の選択肢が限られることが多々あります。理系は文系に比べ、物理や化学など膨大な量の知識を習得しなくてはいけませんので、国語を後回しにすると時間的にも体力的にも間に合わなくなることがあります。
前述したように、古典の基礎は高校1年生で一気に学びます。そのため、文系志望も理系志望もスタートでつまずくと挽回が大変なのです。ただ、多くの呉市の中学生は高校生になる前にこんなことを考えてはいないはずですよね。なんとなく国語の優先順位は低いまま高校生になる人が多いのではないでしょうか。



ですのでこの記事を読んで、少しでも心構えだけでも知っておくことで一歩先を進めるのではないかと思います。
まとめ
中学国語と高校国語は学ぶ内容のギャップが大きいです。経験してきた大人にとっては当たり前でも、これから高校生になる中学生はそんなことを体感しているはずもなく、中学の感覚でなんとなく国語は放っておいても大丈夫なんじゃないかと思いながら過ごす。なんだか模試で点が取れなくなってきて、気づいたときには取り返しがつかない。…みたいなケースは結構あるんじゃないでしょうか。
繰り返しになりますが、中学までは読むことが中心で「なんとなく」でも解ける部分が多いのです。しかし、高校では体系的な知識を身につけたうえで、使い分けることができなければ得点できません。だからこそ、中学のうちから「国語は将来も重要な科目」という意識を持つことが大切ですし、高校生になったら早めに国語の優先順位も上げてほしいと思っています。
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